
少年達の、ひと夏の想い出
「少年の日の想い出」。世界がキラキラ輝いて、目の前に果てしなく広がっていて。秘密基地に仲間と毎日集まって、くだらない話で盛り上がって、笑って、たまに派手に喧嘩もして。何にでもなれる、何でもできる。そう信じて疑わなかった、あの頃。
そんな日々をかつて過ごした人も、過ごさなかった人も。少年の日の思い出と聴けば、そんな情景を思い浮かべるのではないでしょうか。スティーヴン・キングの小説が原作のこの映画は、そんな少年の日の想い出、ゴーディ、クリス、テディ、バーンという名の少年達の、ひと夏の冒険を描いた青春映画です。
ちなみに四人の中で一番やんちゃなクリスを演じているのは、若くして亡くなった名優リバー・フェニックス。そのクリスをいつも虐めている不良少年役で、『24』のキーファー・サザーランドが出演しています。二人ともキッズとしか言えない年齢ですが、あまり雰囲気は変わっていません。
宝物のような日々
少年達の冒険といえば、宝探しや探検を思い浮かべるかもしれませんが、少年達が探すのは、死体。バーンの兄とその仲間達が噂していた死体を先に見つけて、テレビにでて有名になってやる! いかにも12歳の少年が考えそうな事を思いついた四人は、寝袋を背負って死体が放置されていると言う森へ向かいます。
つまりこの作品はロードムービーの体をなしているわけで、四人並んで線路をたどるシーンなんて、モロ青春。見ているだけで微笑んでしまいます。
まぁ線路の上なんて歩いていれば当然列車に追いかけられるなんて事もあるわけで、みんなで死にもの狂いで走るのもまた、青春。途中で泣きながら喧嘩をするのも青春。沼を渡るうちにヒルにかまれるのも、青春です。
本当は目的なんて何でもいいのです。大人の目を逃れて、大好きな友達と一緒に何かをする。それだけで楽しい。嬉しい。後から振り返れば、一瞬一瞬が宝物のような日々。
いつもそばにいて
映画の題名であり、あの有名なBen E. Kingのテーマソング『Stand by me』を直訳すれば、「そばにいて」もしくは「味方でいて」になるでしょう。
歌の方は繰り返しダーリンと呼びかけていることからも恋人に向けて歌っているのだと思うのですが、少年達のロードムービーであるこの映画に実によくあっています。友達がいれば何でもできる。友達さえいれば、ほかに何にも要らない。だから、だからいつも僕のそばにいて。
そんな幼少期特有の、他の誰も割って入ることができないほどの強い結束、関係性。「大人」になった今ではそこまで純粋に誰かを求めることも信頼することも、少なくとも筆者は出来ません。
でもこの映画を見れば、自分にも確かにそんな頃があったなぁと、甘酸っぱく想い出すことができます。そしてきっとこれを読んでいる、あなたも。この映画をお供にかつて少年、もしくは少女であった日々に、たまには戻ってみませんか?
作品情報
原題:『Stand by Me』
出演者:リバー・フェニックス、ウィル・ウィトン、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、キーファー・サザーランド
監督:ロブ・ライナー
関連作品:『ショーシャンクの空に』『ゴールデンボーイ』
原作:『THE BODY』スティーヴン・キング著