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ハリウッド製でもひと味違う、名作ホラー映画『シャイニング』

ハリウッド製でもひと味違う、名作ホラー映画『シャイニング』

東と西では恐怖の形が違う

日本を代表としたアジアのホラー映画と西洋、とくにハリウッド製のそれとでは、大きく違う点があります。それは、悲鳴と血と、叫び声をあげて逃げ惑う女性の数。

アジアの、特に日本のホラーでは、恐怖とは潮が満ちるかのごとく、ひたひたと忍び寄ってくるもの。最初は姿が見えず、ぼんやりとした不安があるだけ。しかしひとたび形が作られれば、畳みかけてくるものです。

それに対してハリウッド製のホラーは、最初から分かりやすいと言うか、騒々しいと言うか。たいてい映画冒頭から、派手に叫び声をあげる女性が登場します。で、かなりの確率で、そのまま血だらけになって死にます。

恐怖よりも驚きがまさり、時にはその血しぶきの量に笑いすらこみあげてくる。現在は和製ホラーの影響か変化も見られますが、基本はそのスタンスのものが多い。しかしこの『シャイニング』は、すこし様子が違います。

名作ホラー映画。だが……?

『シャイニング』のパッケージはとても有名ですから、映画を見たことがない方でも、パッケージだけは見た事があるかもしれません。そう。主演のジャック・ニコルソンが裂けた扉の間から顔をのぞかせている、あれ。狂気に満ちた爛々と輝く彼の眼とその笑いに誰もが釘付けになる、あれです。

この作品は名作ホラー映画といえば必ず名前があがり、古典と言っても良いものではありますが、そのパッケージのインパクトに比べれば、冒頭は地味に始まり、ぼんやりとした不安や違和感を抱くでしょうが、あまり怖くはありません。

舞台は人里離れた雪深い山上にある、古いホテル。小説家志望のジャック・トランスが、冬に閉鎖されるこのホテルへ、管理人としてやってきます。

彼は妻のウェンディと息子のダニーを一緒に連れてきており、映画の主要「人物」は、この三人だけ。後は、不思議な能力を持つダニーが主として見かける、双子の女の子などの、人ならざるモノが出てくるだけです。

ね? あらすじを書いても、あんまり怖そうに思えませんよね。

原作はスティーヴン・キング

この映画が怖くなるのは、主人公のジャックが変わってからです。

ホテルに来るまで、そして来てからもしばらくの間は、軽いジョークを飛ばして笑っていた彼が、だんだんナニカに蝕まれていきます。

軽快にタイプを打っていたと思ったら、何十枚にわたって同じセンテンスを繰り返し打っていたり、家族以外に誰もいないはずのホテルで、女性やバーテンダーと話したり。笑い方も表情も少しずつおかしくなっていき、ついにはホテルのいわく通り、彼も斧を手に妻を……。

この映画には原作がありまして、ホラーと言えばこの人の、スティーヴン・キングが書いています。

映画と原作とではホテルや登場人物の描写がかなり異なり、それでキングが監督のスタンリー・キューブリックを罵ったようですが、映画としてのまとまりは悪くないと思いますし、それを見比べてみるのも面白いかも知れません。

ともかく、ハリウッド製としては血も叫び声も逃げ惑う女性の数も少ないこの映画、どうぞお楽しみください。

作品情報

原題:『The Shining』
出演者:
監督:
原作:『シャイニング』スティーヴン・キング著

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Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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