むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

ただの「感動巨編」ではありません。『ショーシャンクの空に』

ただの「感動巨編」ではありません。『ショーシャンクの空に』

ながらく避けていた名作

素晴らしい作品は、常にいろんな要素を含んでいるので、一言で「こんな映画だ」と紹介するのは難しいものです。

この『ショーシャンクの空に』もそんな作品の一つ。友情、信頼、冒険、悲劇、復讐、希望……この映画にはそれら全てとそれ以上のものが含まれています。だから「ヒューマンドラマ」というジャンルで紹介されることが多いのでしょう。

実はこの映画を、ながらく避けていました。原作を先に読んだので、どんなに素晴らしい物語であるかも知っていましたし、もちろん結末も知っていました。

そして映画の方も、「感動巨編」として評価が高いものである事を知っていましたし、なにより名優モーガン・フリーマンが主演の一人なのです。素晴らしくないわけがない。だからこそ、観るのにかなり気合がいると避けていました。

その判断は半分あっていて、半分間違っていました。

塀の中の銀行員

あらすじを説明するだけではつまらないので、好きな場面を紹介したいと思います。

まずは主役の元銀行副頭取のアンディが、刑務所の中で「仕事」を始めるシーン。「息子の学資資金を作りたい」と相談しに来た刑務官に、紙をとんとんとそろえながら、「さて」とまさに銀行家らしく話しかけるシーンです。

大抵の人間が銀行に来た時そうであるように、緊張で強張った刑務官の顔がおかしい。

アンディの「改革」はそこから始まり、ショーシャンクのすべての刑務官、さらには周辺刑務所の刑務官の税務申告を手伝い、信頼を得ます。同時に州議会に手紙を書き続け、ついには粘り勝ちで刑務所内の図書館の予算と古本を手に入れ、埃だらけの小部屋を立派な図書館にしてしまうのです。

その古本と一緒に入っていたレコードを、郵便室を占拠して刑務所内に流すシーンは必見。扉の向こうで「今すぐ止めろ」といきり立つ刑務官たちをしり目に、いつもはほぼ無表情な彼が満足げな微笑みを浮かべて椅子にもたれかかる姿、スピーカーから流れるオペラに聞き入る囚人たちの姿は晴れ渡る空を仰ぎみる様な爽快感があります。

罪と罰について考える

変わり者、新参者が膠着した組織を変えていく物語は、この映画以外にもあります。

しかしこの映画では、その組織が刑務所であることと、主役達が「罪」を犯した人々であるところが少々特殊であり、それゆえ物語にさらなる深みを与えているのだと思います。

罰として入れられたはずの刑務所で長く暮らすうち、そこが唯一の安らげる場所となってしまう。仮出所に怯える老いた囚人のブルックス、待ち望んでいたはずの仮出所後、刑務所に「帰りたい」と思ってしまう、モーガン・フリーマン扮するレッド。

そんな彼らを見ていると、「死刑よりは軽い罰」だと思っていた終身刑について考えさせられます。そして、彼らとともに20年近く刑務所で過ごしながら、決して希望を失わなかったアンディについても。

希望は誰にも奪われない

この映画の原作は、ホラー作家として有名なスティーヴン・キングのホラーではない四部作で、その中には有名な『スタンド・バイ・ミー』があります。

原作の題名は、『刑務所のリタ・ヘイワース‐春は希望の泉』。そう。アンディが「誰にも奪われない」「永遠の命」とレッドに語った、希望。結局それが彼らを、明るい空の下へと戻してくれたのでしょう。

この映画は最初に予想したとおり、観るのに少々気合がいります。しかし、その気合と鑑賞時間を費やす価値は十二分にある名作であることも、確かです。もしあなたが著者のように尻込みしてまだ観ていないのならば、この機会にぜひどうぞ。

作品情報

原題:『The Shawshank Redemption』
出演者:
監督:
原作:『刑務所のリタ・ヘイワース‐春は希望の泉』スティーヴン・キング著

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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