
きっと来る
人もまばらな映画館で、日が暮れてから観たのが悪かったのでしょうか。映画を観終わった後、トイレに一人で行くのが死ぬほど怖かったです。ホラー映画とはいえ、そうなったのは後にも先にもこの映画だけ。更に言えばこの映画の後しばらくは、なにも写していないテレビ画面を見るのも怖かったですね。いまにもそこに井戸が映って、貞子が這い出てくるようで。
『リング』。鈴木光司原作のホラー小説を見事に映像化し、ジャパンホラーの興隆を生み出した記念すべき作品です。
この映画の怖さは、観なければ分りません。あの、足元からひたひたと忍び寄ってくる恐怖。ひんやり湿った、ほの昏い闇の向こうに潜む何か。叫び声が喉もとで凍りつき、観たら最後、網膜に焼きついて繰り返し、繰り返しあなたを恐怖の底に突き落とします。
一人では見ないでください
怖い、怖いとばかり言っても始まらないので、簡単にあらすじをご紹介しましょう。主人公は、男女二人。それぞれ松嶋菜々子と真田広之が演じています。
テレビ・ディレクターの浅川玲子が姪の智子と、同時刻に死んだ友人達の事件を調べたところから物語は始まります。調べていくうちに、彼らは旅先であるビデオを観ていた事がわかり、玲子もそのビデオを見るのですが、それは観たものを殺す呪いのビデオでした。
彼女は何とか助かろうと、元夫にして超能力者の高山竜司に助けを求めます。彼と周囲の協力により、玲子は死なずに済み、呪いはとけたかに思えたのですが……。
そこから先は、ご自分で。あまりにも有名なシーンであり、いまは便利な時代ですからYouTubeなどで「リング、貞子」などと入力すれば、簡単にみつかるでしょう。観た後のことは―――自己責任で。一人で見るのは、お勧めしません。
原作も怖い
先にふれたように、この映画には原作があります。鈴木光司著、『リング』。続編も出版されており、『らせん』『バースデイ』とそれぞれ映画化されました。どちらも読んで映画も観ましたが、やはり最初の『リング』が一番怖いと感じます。
ホラー好きの友人から借りて読んだのが最初ですが、読んでいるうちにくらい水底にぐるぐると引きずり込まれるようで、読み始めたのを後悔しました。さりとて続きが気になり、と言うより途中でやめればそれこそ呪われそうで、自分を騙しだまし、出来るだけ人の多いところで終りまで読みました。
基本的に本は何度か繰り返し読むのを愉しみとしているのですが、この本はその後二度と手に取っていません。理由はまぁ……お分かり頂けますよね。
そんな風に著者に忘れがたい恐怖を植えつけてくれた原作、映画とはまた違った怖さがありますから、あなたも一度、味わってみませんか?
作品情報
出演者: 松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀
監督:中田秀夫
原作:『リング』鈴木光司著
シリーズ作:『らせん』、『リング2』、『リング0 バースデイ』