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フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

愛は世界に溢れている。クリスマス以外でも観たくなる『ラブ・アクチュアリー』

愛は世界に溢れている。クリスマス以外でも観たくなる『ラブ・アクチュアリー』

クリスマスは愛の季節

クリスマスともなると、日本では恋人がいない事を嘆いたり、あえて一人を楽しんだりと恋「愛」がらみで騒ぎがちですが。本家本元のキリスト教諸国では、家族愛や隣人愛を分かち合う季節です。

『ラブ・アクチュアリー』はそんなクリスマスを舞台に、男女19人が織りなす9つのラブストーリーを主軸に描いた映画です。

ちなみに題名の『ラブ・アクチュアリー』は冒頭のナレーション、”love actually is all around”からとったものです。直訳すると「愛(love)は実のところ(actually)いたるところにある(is all around)」になりますが、わたしは勝手に「愛は世界に溢れている」と意訳しながら見ています。

シーンにぴたりとはまった選曲

既に名脚本家として知られていたリチャード・カーティスの初監督作だけあって、9つの恋愛(ひとつは同士愛ですが)模様が混乱も停滞もせず、時に重なりながら同時進行していきます。

独身の英国首相の秘書への片思いや、親友の花嫁に恋しちゃった愛の画家の苦悩と、ひとつひとつのエピソードも大いに語りたいところですが、まずは各シーンの選曲の妙に、拍手を送るべきでしょう。

恐らく一番有名なシーンは、ヒュー・グラント扮する英国首相が、ノリノリで踊るポインター・シスターズの『Jump』。

執務役に見つかった後のごまかし方も可愛い。

結婚式のサプライズとして歌われるのは、ビートルズの『All you need is love』。

まるでカーテンコールのように、各エピソードの主役達が再登場するエンディングで流れるのは、ビーチボーイズの『God only Knows』。

それ以外にも、要所のシーンで繰り返し流されるオーケストラ曲など、「あぁもうこのシーンにはこの曲だよ!」と叫びたくなるハマりっぷりです。

いまでは超有名なあの人も

この映画は愛を描いてはいますが、各エピソードはいたって慎ましやかなもの。運命に翻弄されるわけでも、どろどろの愛憎劇が繰り広げられるわけでもありません。

まさに愛の季節クリスマスにうってつけ、家族や友人、恋人と一緒に、観おわった後微笑みあえる作品です。が。いまでは超有名になった俳優達が勢ぞろいしている凄い映画でもあるのです。

例えば親友の花嫁に恋する画家を演じたのは、アンドリュー・リンカーン。『The Walking Dead』の主役と言えばお判りでしょうか。この時はまだ若くがっしりしているのですが、あのひたむきでちょっと悲しそうな目は変わりません。

さらにその親友役は、『それでも夜は明ける』でゴールデングローブの主演男優賞を獲得した、キウェテル・イジョフォー。他にも、いまや英国だけでなく世界中で引っ張りだこのマーティン・フリーマンに『ゲーム・オブ・スローンズ』のイケメン俳優が子役で出演しているなど、そうそうたる顔ぶれです。

そうそう。その義理の父親役のリーアム・ニースンと恋に発展しそうな女性キャロル役で、スーパーモデルのクラウディ・シファーが出ていたのにも驚きました。

「愛」とは本来

このように『ラブ・アクチュアリー』は「愛」を描いた映画であり、恋愛エピソードがメインです。しかしもう一つ愛を感じさせる名シーンを、ネタバレになりますがご紹介しましょう。

ヒュー・グラントの英国首相が、米国大統領と会談後の記者会見をするシーンです。

終始高圧的だった大統領が、満足げに関係強化がはかれたと記者団にこたえた後、首相は「私はそう思わない」と反論します。

そして、「我々は確かに小国かもしれないが、偉大な国でもある」と言ってシェイクスピアやチャーチルを引き合いにだし、ハリーポッターやサッカー選手のベッカムの右足、ついでに左足についても触れ、笑いを取ります。

真面目な演説の最中でもユーモアを忘れない姿にも痺れますが、その後「侮るようならば、私はより力強く応対しよう。ですから大統領、御覚悟を」と真っ向から挑戦状をたたきつけるその姿に、毎回涙ぐみつつ拍手を送ってしまいます。

就任したばかりで「友好国」へ配慮していた、若き首相。それでも最後に言うべき事をいった彼の顔には、祖国への誇りと愛が溢れていました。

そして首相を見守るスタッフの目にも。昨今、「自国第一主義」が声高に叫ばれているようですが、それは本来、他者をおとしめるように振りかざすものではなく、胸にそっと抱くもののはず。

このシーンの彼らの態度と表情こそ、そんな健全で真っ当な「祖国愛」だと思うのですが、あなたはどう感じるでしょうか?

作品情報

原題:『Love Actually』
出演者:
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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