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フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

大いなるお馬鹿映画『俺たちフィギュアスケーター』

大いなるお馬鹿映画『俺たちフィギュアスケーター』

大いなる「お馬鹿映画」

最初にはっきり言いっておきましょう。これは大いなる「お馬鹿映画」です。ちなみに褒めています。

『Time to say goodbye』。サラ・ブライトマンの透明な歌声に思わず聞き惚れるオープニング。かわいらしい金髪の少年が真冬の池のリンクで尼僧たちに囲まれながら、楽しそうにスケートをしています。

池の端にはなんだか派手なネクタイのおじさんと、彼を期待に満ちた目で見ている神父さん。会話から推測するに、ネクタイのおじさんはスカウトマンのようで。その後場面は変わっていき、スカウトマンではなく多分野にわたり名選手を育てた名プロデューサーの手により、少年ジミーは大人気フィギアスケーターとなって各方面で活躍中。

そこまではいい。問題は、ウィル・フェレルが出てからです。チャズ・マイケル・マイケルズなんていう役名で彼が出てきた瞬間、一気にお馬鹿路線にまい進していくのです。

そう彼。日本ではあまり劇場公開作品はありませんが、B級コメディ映画には欠かせない、。彼がいつものちょいと小太りの体型のままで、カウボーイハットに鋲をこれでもかとつけた黒いカウボーイスーツ(もしくはロックンローラー?)で現れ、華麗に氷上で舞い踊ります。

もちろんジャンプなどの部分はCGでしょうが、彼が大げさなポーズを決めるたび、客席からは黄色い悲鳴が。演技の中ハットを投げれば、審査員団の一人である女性(彼と似たような格好をしていることから熱烈なファン)が頬を上気させて受け取る。もうなんというか、これだけでお腹いっぱい。でも何度もそのシーンを見てしまう様なインパクト。

そして。片や王子様路線のアイドル、片や女性を虜にするらしい、ワイルド系おっさん。そんな二人がペアを組むのでスケートをすると言うのですから、波乱が巻き起こらないわけはないのです。

先にお断りしておくと、フィギュアスケートの公式の試合には、同性同士のペアでは出場できません。ただし、アイスショーでなら男子ペアもいるようです。

その男子ペアを見たことはないのですが、少なくともこの映画の二人、ジミーとチャズのペアの演技に関しては……なんとも居たたまれなくなると言うか。どれだけ片方がキラキラしたイケメンだとしても、恋人同士でもない男同士で見つめ合いながら、滑っているのを見るのは……ねぇ?

ネタと笑いにとことんこだわりました!

あらすじをもうすこしだけ紹介しておきましょう。

反目しあうライバルの二人がなんでまたペアを組んだかと言えば、オープニングの世界選手権で同点1位を獲得した2人は表彰式で乱闘騒ぎを起こしてしまい、協会から金メダルの剥奪と参加部門からの永久追放処分を受けてしまったからです。

しかし処分後もスケートに対して未練があったジミーはペア部門でならスケート界に復帰できる事を知り、同じくくすぶっていたチャズと成り行きでペアを組むこととなったのです。

そしてこの映画、単なるお馬鹿映画というだけではなく、ネタの宝庫。題材とするフィギアに関してだけでもえらいこだわりを見せてくれます。

ほんの数秒の出演ですが日本人スケーターの佐藤有香さんや、トリノオリンピックの銀メダリスト、サーシャ・コーエン。グルノーブルオリンピックで金メダルのペギー・フレミングに、サラエボオリンピックで金メダルを取ったスコット・ハミルトンなども出ています。

チャズとジミーが決める技も、ペアが手を取り合い、片方がリンクと水平になった相手をぶん回すデス・スパイラルという技を発展させたような「アイアン・ロータス」。

「股間リフト」はギャグ映画感満載な業だとは思いますが、リフトされているジミーは指先までピンと反らした美しい演技でした。他にも、自己陶酔しきった演技の〆ポーズやフィギュアスケーターあるあるの、摩訶不思議な髪型や他で着ていたら通報されるだろうレベルの過激な衣装についてもきっちり表現しているところも面白い。

製作に喜劇界のサラブレット、ベン・スティラーの名がありますから、細部までこだわって観客に笑ってもらおうと言う作りになっているのも頷けます。

こちらもお薦め

フィギアが題材ではないのですが、これと似たようなノリの映画として挙げたいのは、『オースティン・パワーズ』シリーズ。マイク・マイヤーズ扮する007をパロディ化したスパイが活躍、というかはちゃめちゃに暴れまわる映画です。

この映画もスパイ映画でのお約束を徹底的にパロディ化する事に血道をあげ、細部へのこだわりが凄い。そしてオースティン役のマイク・マイヤーズ氏はイケメンでもマッチョでもセクシーでもないのですが、007のごとくモテまくり、行く先々で女子といい感じになるあたり、この作品のチャズと同じですね。きっと、「お馬鹿映画」の主役男子は小太りでもおっさんでもモテモテという不文律があるのでしょう。

この『オースティン・パワーズ』シリーズは日本でも流行りましたので、観た方も多いかもしれませんが。まだ観ていない方で、この『俺たちフィギュアスケーター』に大爆笑した方ならきっと気に入ると思いますので、ぜひご覧ください。

作品情報

原題:『Blades of Glory』
出演者:
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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