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浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪その他の主要映画祭編≫

浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪その他の主要映画祭編≫

浜の真砂が尽きるとも

さて。これまでアカデミー賞などの日本でも知られた映画賞や、日本人の監督や作品、俳優さんが受賞したというニュースで名前だけは知っているけれど、正直なにがすごいのか良くわからないし、違いもいまいちわからない。そんな欧州の主要映画祭、そして日本の映画祭についてお話してきました。

なにしろ映画賞というものはこのシリーズのタイトルにもあるように、浜の真砂ほどにもあります。ですからたかだか3回コラムでご紹介した程度ではとても語りつくせるものではないのですが。映画賞・映画祭はある意味玉石混淆。

映画祭の中には、世界のトップブランドのドレスに身を包んだ女優さん達がレッドカーペットで美を競うものもあれば、村おこしの行事のように、ご当地だけでこぢんまりと開催されているものもあります。

ですから今回「その他の主要映画祭」と題してカナダとアメリカで開催されている二つの映画祭をご紹介して、一端筆を置こうと思います。

カナダ・トロント国際映画祭

それではまず、1976年から開催されている「トロント国際映画祭」についてご紹介しましょう。

カナダの首都で開催されているこの映画祭では、例年300以上の作品が上映され、ベルリン国際映画祭とカンヌ国際映画祭に次ぐ規模の来場者が集まります。カナダの映画祭と言えば「モントリオール世界映画祭」もありますが、こちらはフランス語圏である影響かフランス映画の出品が多く、ハリウッド系の映画の出品は多くありません。その為、アカデミー賞の行方をうらなう映画祭としては、トロント国際映画祭の方が重要視されています。

この映画祭の最高賞は、「観客賞(ピープルズ・チョイス・アウォード)」です。邦画の受賞は少々昔になりますが、2003年に北野武監督が『座頭市』が受賞していますね。それから受賞はしていないものの、上映された作品としては三池崇史監督の『殺し屋1』があります。

三池監督は、日本一バイオレンス映画を撮るのが上手い監督で、クエンティン・タランティーノやイーライ・ロスなど、海外の有名監督にもファンがいます。2001年に『殺し屋1』が上映された際には、エチケット袋が観客に配られるという配慮があったほど。

最高賞を受賞した北野監督も『アウトレイジ』のようなバイオレンス作品を多く製作していますが、『座頭市』はバイオレンスよりも華麗な殺陣や「下駄タップ」といったコメディの側面が評価されたように思えます。

近年の受賞作を見ても、2015年がアカデミー賞で監督賞などを受賞した、レニー・アブラハムソン監督の『ルーム(Room)』。2016年がゴールデングローブ賞やアカデミー賞を総なめにしたデミアン・チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド(La La Land)』ですから、やはり衝撃的すぎない作品が評価される傾向にあるようです。

アメリカ・サンダンス映画祭

もうひとつの主要な映画祭としてご紹介するのは、アメリカのユタ州で開催されている「サンダンス映画祭」です。この映画祭は、1978年に名優にして監督でもあるロバート・レッドフォードが始めました。

当初はアメリカのド田舎というイメージのあるユタ州の村おこしとして始められ、メイン・イベントは古い映画の回顧展。他には映画製作者らによるディスカッションなどが行われる程度でした。けれど当時からすでにハリウッドの本流からはずれた作品のプログラムも含まれており、それが現在のような応募総数8,000本を越えるような一大インディペンデント映画祭となる端緒となったのでしょう。

そしてこの映画祭の凄いところは、その応募総数だけではありません。

全世界で公開されるメジャーな作品ではなく、単観で上映されるインディペンデントな作品を主軸とした映画祭であることは確かですが、ロバート・ロドリゲスやクエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュといった今ではメジャー映画のヒットメーカーとして認知されている映画監督の知名度を上げた映画祭でもあることです。

またホラー映画に新たな方向性を示した『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『ソウ』などもこの映画祭で見いだされ、世に知られるようになりました。

また映画祭を盛り上げるのは観客ですが、このサンダンス映画祭の観客は、映像作家や俳優、配給会社の買い付け担当といった直接的な映画関係者だけではなく、弁護士やエージェントにマネージャーなどのビジネス関係者が圧倒的に多いという特徴があります。

素晴らしい作品に出会えるかもと期待に胸を弾ませる映画好きよりも、濃い色のスーツで武装し、スマホとパソコンを手放さないビジネスマンが会場を埋め尽くす様は映画祭としては少々異様かもしれませんが、第二・第三のタランティーノやロドリゲスを見出したいという彼らの熱意もまた、この映画祭を支えているのかもしれません。

ちなみに近年のグランプリ(審査員大賞・ドラマ部門)と観客賞(ドラマ部門)をご紹介すると、2015年にはアルフォンソ・ゴメス=レホン監督の『ぼくとアールと彼女のさよなら』が、2016年にはネイト・パーカー監督の『バース・オブ・ネイション』が両賞を獲得しています。

いかがでしたか?

さて。4回にわたって世界の主要な映画賞と映画祭についてご紹介しましたが、いかがでしたか?

単純な作品の良しあしではなく、コマーシャリズムや利権、開催時の世相に左右される映画賞もあれば、独自の評価基準を貫く映画祭もあります。そして、各コラムで何度も触れてきたように、ある映画祭でグランプリを獲ったというのは、ひとつの参考値にしかなりません。

映画祭・映画賞でその作品、監督、俳優を選んだのは、あなた以外の誰か。その誰かはあなたと好みが似ているかもしれないし、全く違うかもしれない。だから絶賛されていてもあなたにとってはつまらない作品かもしれないし、酷評されてしまっても、抱腹絶倒、もしくは全あなたが泣く作品かもしれません。

映画館に足を運ぶのであれ、DVDやブルーレイで鑑賞するのであれ、あなたの大切な時間とお金をかけて選ぶ一本です。これらの映画賞・映画祭の受賞作品を参考にしつつ、素敵な一本を選び、心ゆくまで楽しんで下さい。

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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