むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪世界三大映画祭編≫

浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪世界三大映画祭編≫

浜の真砂が尽きるとも……

世界には、無数の映画祭があります。有名どころをあげれば、国際映画製作者連盟(FIAPF)が公認のする世界三大映画祭の

  • 「カンヌ国際映画祭」
  • 「ヴェネツィア国際映画祭」
  • 「ベルリン国際映画祭」

これに「ロカルノ国際映画祭」をくわえると、世界四大映画祭と呼ばれます。

その四大映画祭にさらに

  • 「マール・デル・プラタ国際映画祭」
  • 「上海国際映画祭」
  • 「モスクワ国際映画祭」
  • 「カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭」
  • 「ロカルノ国際映画祭」
  • 「モントリオール世界映画祭」
  • 「サン・セバスティアン国際映画祭」

そして我らが日本の「東京国際映画祭」と「カイロ国際映画祭」を合わせると、世界十二大映画祭と呼ばれます。

これらの映画祭はそれぞれ賞の選定基準が異なり、どの映画祭が一番権威ある、ようはどれを取れば一番箔がついてお客さんがどんどん呼べるかと言えば……時と場所と相手に寄る、としか言えません。

たとえば日本でも名の知られたカンヌ国際映画祭で受賞しても、ほとんど公開されない作品や興行成績の振るわない作品もあります。河瀬直美監督の『殯の森』が2007年にグランプリを取りましたが、観た事、もしくは近くの映画館で上映されているのをみた事がありますか?

つまりは、受賞、即お客さんが殺到。もしくは世界中で喝采を浴びる。という訳ではありません。ちなみに日本人にはカンヌより知られている「アカデミー賞」は、授賞式であって映画祭ではありませんので、映画祭としてはカウントされません。

世界三大映画祭とは?

  • 「カンヌ国際映画祭」
  • 「ヴェネツィア国際映画祭」
  • 「ベルリン国際映画祭」

これら三つの映画祭は、日本人の監督や作品、俳優が何度か受賞している為、日本でもわりと名の知られた賞でしょう。しかし

  • カンヌはフランスで、
  • ヴェネツィアはイタリアで、
  • そしてベルリンはドイツで

開催されると言う事は知っていても、各賞の特徴を知っている方は、少ないのではないでしょうか?

カンヌ映画祭の特徴

まず、カンヌ国際映画祭についてですが、設立されたのは1930年代後半。ファシスト政府の介入を受け政治色が強くなってしまったヴェネツィア国際映画祭に対抗するために始められました。

三つの映画祭の中では一番知名度・注目度が高く、毎回世界中の俳優、映画監督を筆頭とした製作者が出席し、アカデミー賞授賞式と同じように映画やファッション雑誌にレッドカーペットを彩る女優さんのドレス特集記事が掲載されます。

「コンペティション部門」、「非コンペティション部門」、「ある視点部門」など複数の部門に分かれ、開催するたびに細々と変更されています。時折「カンヌ映画祭受賞」などと報道され、最高賞であるパルム・ドールや監督賞、男優賞、女優賞などの審査対象になるのは「コンペティション部門」の受賞作品のことをさすことが多いです。

ヴェネツィア国際映画祭の特徴

そんなカンヌに対抗されたヴェネツィア国際映画祭は、世界最古の歴史を持つ映画祭です。と言っても、中断期間はありますが。開催場所は、ヴェネツィアのリド。日本語ではあの古く美しい街の事をベニスと読んだりベネチアと読んだりしますので、国際映画祭もそれと同じように表記されることがあります。

商業よりも芸術の映画祭として永らく開催されていましたが、2002年にマーケットが設けられるに伴い、近年は商業映画、エンターテイメント性の高い作品の比重が高まっています。

ベルリン国際映画祭の特徴

ベルリン国際映画祭は上記二つの映画祭に比べると、いわゆる「社会派」の作品が集まる傾向にあり、2010年に『キャタピラ』で主演した寺島しのぶさんが、最優秀女優賞である「銀熊賞」を受賞しています。また最近の傾向としては、新人監督の発掘に力を注いでいます。そして三大映画祭の中で唯一、大都市で開催されていますから、来場者数も一番多いです。

ちなみにベルリン国際映画祭の最高賞は「金熊賞」ですが、これをどう読むか、皆さん分かりますか?

以前は「きんゆう」と呼んでいましたが、最近ではより分かりやすく、「きんくま」と読むのが一般的です。まぁそもそもドイツ語を日本語に翻訳しているだけですからどちらでも間違いではないのですが、なんとなく品格を感じるのは、「きんゆう」の方、ですよね?

国際映画祭は字幕派

ここでちょっと話が変わりますが、皆さん外国語映画をみる時は、字幕派ですか? それとも吹き替え派でしょうか? というのも、カンヌやヴェネツィアなどの国際映画祭で上映される映画には、その映画祭が開催される国の言語もしくは英語の字幕をつけることが、義務付けられているからです。

やっぱりねぇ。いくらグローバル化が進み、国際的に活躍する俳優さんや監督さんは英語くらい話せて当然という風潮があるにしても、「国際」と銘うっている映画祭ですから、様々な言語の作品が出品されるわけで。しかも映画は見てもらってなんぼ、ある程度の人数に理解されてなんぼ、なモノですから。相手がより受け取りやすくなるように、かつ出演者の元のトーンで伝えるために、吹き替えではなく字幕をつけるのは当たり前でしょう。

そう言えばその字幕については、面白い話があります。

黒澤明監督の『羅生門』がヴェネチア国際映画祭に出品された際。字幕の費用を大映の社長は出し渋ったそうです。これにしびれを切らしたのが、出品を提案したイタリーフィルムの社長。自費で英語字幕をつけ、出品にこぎつけました。
もしこの社長が発奮してくれなければ、『羅生門』が受賞することもなく。受賞しなければ、「世界の黒澤」も誕生せず。 受賞により知名度がうなぎ上りに上がった黒澤監督が、莫大な製作費をかけた数々の名作を作ることもなかったかもしれませんね。

結局のところ

さて。世界三大映画祭としてひとくくりで呼ばれることはあっても、各賞の選考基準は、それぞれ違います。例えばカンヌ国際映画祭では、「映画祭より12ヶ月前以降に製作された作品であること」、「これまでに製作国以外で上映されていないこと」などありまして、他の国際映画祭において選考の対象になった作品は、いかなるものでもカンヌ映画祭では選考対象外となります。

そもそも国際映画祭の開催目的の一つは、その年の映画の傾向や新たな才能の発掘など、映画業界を活性化させるため。それから一種の国際見本市としての役割もあります。会員が対象作品を選ぶアカデミー賞と違い、出品作品は公募されますから、各映画祭の規定さえクリアし、応募枠さえあれば誰でも、どんな作品でも応募できるのです。

著名な映画祭で受賞しないでも上映されるだけで箔が付きますし、注目されます。そして注目されればそれだけ多くの人に観てもらう機会も増えますから、映画製作者や配給会社はこぞって参加するわけで、実際に無名監督が撮った実績のない作品が出品されることはないのですが。

それから、日本では「コメディアン」として認知されている北野武さんですが、ヴェネツィア国際映画祭やカンヌ国際映画祭に毎年のように出品し、金獅子賞の受賞歴があることからも解るように、海外の映画業界では素晴らしい映画監督として評価されています。

まぁカンヌで上映されたものの、あまりの暴力描写に途中退席する人が続出した『アウトレイジ』のような好みの分かれる作品もありますが、『菊次郎の夏』などは良い作品だと筆者は思います。

長らく続いた著名な「国際」映画祭では、コネもカネも通じません。各映画祭の特徴の項でご説明したように、賞によって好まれる作品が分かれますが、少なくとも審査する側が心を動かされなければ受賞には至りません。また逆に、審査員や映画祭に馳せ参じた玄人が絶賛していても、年に数回映画館に足を運ぶ程度の「素人」にとっては意味不明な作品も沢山あります。

結局のところアカデミー賞と同じく、これらの映画祭で受賞したという事実は、参考程度にしかならないということです。映画はこのみで観るもの。あなたの身銭と何よりも貴重な時間を費やしているのです。「権威ある」賞の受賞作品でも面白くないと思えばそれでよし。無冠の作品であろうと、映画祭で酷評されていようと、あなたがその作品を好きになれば、それで良いのです。

というわけで。さぁ次は、何を観ますか?

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
Return Top