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浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪日本編≫

浜の真砂が尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪日本編≫

浜の真砂が尽きるとも……

アカデミー賞やカンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭ほど著名ではありませんが、日本にもいくつもの映画賞があります。その中でメジャーなものをあげれば、「日本アカデミー賞」、「ブルーリボン賞」、「キネマ旬報賞」でしょうか。

各賞ともに主宰も性質も異なりますので、どの賞が一番「権威がある」とはいえませんし、他の賞についてご紹介した稿でも繰り返しているように、受賞作品、受賞者はあくまで参考程度。崇めたてまつる必要も、変にけなす必要もなく「へぇ」くらいの感想で十分でしょう。

とは言え、賞にノミネートされればそれだけで注目を集めますし、そのおかげで俳優や監督ならば仕事が舞い込みます。作品ならば上映される場所が増え、ノミネート前よりは興行収入も多くなる事でしょう。

そして映画人ならば歴史が長く選考の透明性が高いとされる「ブルーリボン賞」は、誰でも欲しい賞でしょうし、「キネマ旬報賞」は映画好きの読者による投票で選出されますから、ノミネートされるだけで、一定の認知と評価を得ていると言えるでしょう。

業界持ち回りの賞と揶揄されることもある「日本アカデミー賞」とて、本家のアカデミー賞と同じく名の通った賞であることは間違いありませんから、貰えるものならもらいたいと言う方は大勢いるでしょう。

日本アカデミー賞とは?

さて。少々皮肉めいたことを書いてしまいましたが、日本の映画賞はどういった選考基準で選ばれているのでしょうか? 先にあげた三つの賞を例にして詳しくご紹介しましょう。

まず、「日本アカデミー賞」の各賞は、日本国内にいる約4,300人の映画関係者によって構成される「日本アカデミー賞協会会員」の投票だけで決まります。このあたりはアメリカのアカデミー賞と同じですね。選考の対象となる作品は、「前々年12月から前年12月までに『東京都内』で公開された映画」。うぅん。東京都内という点に含みを感じますが、説明を続けます。

正賞は作品部門や俳優部門などの15部門がありまして、それとは別に新人俳優賞などがあります。

受賞の判断基準ですが、これが少々恣意的で、まず日本テレビが製作に関与しているかどうかで評価が変わってきます。これは、受賞式を日本テレビで放映している為であると言われています。

つぎに、東宝や松竹、東映といった老舗の映画配給会社が関わっていないと評価すらされず、いわゆるミニシアター系の作品がノミネートされたのを、少なくとも筆者は見たことがありません。

そして俳優部門では、日本映画黄金期に活躍した、大御所の俳優が受賞する傾向にある事。あぁ、監督もそうですね。ごくたま~に若手が受賞することもありますが、それも年功序列と批判されるのを避けるためと邪推してしまいそうなほどまれな事です。

ふむ。こうして書いていくと、業界持ち回りの賞と揶揄されているのも仕方がなく思えてきました。ちなみに第40回である2016年は『シン・ゴジラ』が最優秀作品賞ほか7冠を達成。最優秀主演男優賞は、『64-ロクヨン-前編』の佐藤浩市。最優秀主演女優賞は、『湯を沸かすほどの熱い愛』の宮沢りえ。うん。やっぱり有名どころばかりですね。

ブルーリボン賞

さて、お次は「ブルーリボン賞」についてご説明しましょう。

1950年に創設されたこの賞は、歴史の長さとなによりも選考基準の厳しさから、日本の映画賞の中で最も権威ある賞のひとつとされています。現在この賞を主催しているのは、東京のスポーツ紙の映画担当記者で構成された「東京映画
記者会」。

スポーツ紙ときくと、話題性のある少々下世話な記事を書いているという印象があるかもしれませんが、映画を担当する記者は、古今東西の映画に精通したシビアな目をもつプロばかり。ちなみに、この賞の授賞式で進行役を務めるのは、その前年に主演男優賞と主演女優賞を受賞した俳優です。

59回目の2016年の受賞歴をあげると、作品賞は「日本アカデミー賞」と同じく 『シン・ゴジラ』が受賞しています。その他助演女優賞を『湯を沸かすほどの熱い愛』の杉咲花に授与しているところも同じですね。

主演男優賞は『聖の青春』をげき太りして演じた松山ケンイチ。主演女優賞は『後妻業の女』で見事な関西弁を披露した大竹しのぶに贈られています。そして、外国作品賞は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に贈られました。

あら。シビアなプロが選んでも、やっぱり有名どころばかりが受賞していますね。

キネマ旬報

日本アカデミー賞とブルーリボン賞は賞の名前ですが、「キネマ旬報」は、雑誌の名前です。同誌選出する賞は世界最古クラスの映画賞で、開催当初の1924年は外国映画のみを対象としていました。日本映画が対象となったのはその2年後です。

毎年、「日本映画」「外国映画」「文化映画」に分けてベスト・テン作品を選びます。その他、読者選出の外国映画ベストや日本映画ベスト、監督賞や脚本賞、各賞でお馴染みの主演、助演女優・男優賞も選出されます。

その選出方法ですが、映画評論家や新聞記者、映画雑誌編集者などから選抜した120人前後の選考委員によって行われています。とはいっても、他の映画賞と違って合議制ではなく各選考委員が各部門10本の映画を選び、1位は10点、2位は9点という風に評価を数値化し、その合計によって各部門の順位が決められます。そしてどの選出委員がどの作品に投票したか、またその選考理由について公表されます。

その点で考えれば、先にご紹介した二つの賞に比べて選考の透明性が高く、賞の中立性と信頼性があると言えるかもしれません。しかし逆に言えば、映画評論家などの玄人好みの作品や俳優が選ばれやすく、エンタメ系のヒット作品は選ばれにくい傾向にあることも確かです。

例えば第90回の2016年、同市選出でも読者選出でも1位は『この世界の片隅に』ですが、大ヒットを記録し読者選出では2位になっている『君の名は。』は選ばれていません。こう言った例はこの賞にはつきもののようで、アカデミー賞でアニメ映画賞を、ベルリン国際映画祭では最高賞である金熊賞を受賞した『千と千尋の神隠し』ですら3位でした。

また2016年の日本映画ベスト・テンでエンタメ系である『シン・ゴジラ』が2位に選ばれたのは、ゴジラ映画は長年作られており、古い映画関係者にもなじみ深かったからという意見もあります。

ただ、楽しめばいい

日本には上記の映画賞の他にも、新聞社主催の「報知映画賞」や「日刊スポーツ映画大賞」、自治体が主催する「ヨコハマ映画祭」や「高崎映画祭」。監督の名を冠した「山路ふみ子映画賞」や「新藤兼人賞」など多数の映画賞があります。

著名な賞もあれば、一部の映画マニアや主宰する自治体の人々にしか知られていない賞もあります。どの賞を受賞しているから素晴らしい映画であるというわけではありませんし、どの賞にもノミネートすらされていないから、面白くない、駄作であるとも言う訳でもありません。冒頭でも書いたように、受賞作品や受賞者は、あくまで参考程度。あなたがまだ知らない作品を見つけるきっかけとして利用し、どうぞ映画を楽しんでください。

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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