むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

これは本来、学校では教えてくれない事!『スクール・オブ・ロック』

これは本来、学校では教えてくれない事!『スクール・オブ・ロック』

よし。もう一回観よう。

映画をこよなく愛する筆者ですが、あぁ~~面白かったと観終わった後、すぐにもう一度観たくなる映画は案外少ないものです。それは、映画の出来不出来、好みによるのではなく、雰囲気であるとか、ジャンルであるとか。例えば全身から涙を振り絞ってくるような悲劇を、続けて観ようとはあまり思えませんよね?

けれどこの『スクール・オブ・ロック』は間違いなく、観終わった後すぐにもう一度、いえ、何度でも観たくなる作品です。

主人公は「音楽とは生きること、そして音楽とはロック!」なギタリストのデューイ。彼はその熱すぎるロック熱とちょっと上っすべりなパフォーマンスのせいでバンドをクビになります。さらに間の悪い事に、居候先の友人ネッドとそのガールフレンドから家賃を払うように言われ、切羽詰まってしまいます。

そんな時、教師補助をしているネッドあてに名門ホレス・グリーン学院の臨時教員の話が舞い込んだからさぁ大変。たまたまその電話を受けたデューイは、週払いの賃金の良さにつられ、ネッドになりすまして学校にもぐりこみます。最初は教師などやる気のなかった彼ですが、学校で無気力にすごす子供たちを見て、さらに子供たちの音楽の才能にも気付き、子供たちとバンドを組んでバンドバトルに出場することを思いつくのですが……。

芸達者な出演者たち

生徒役の子供たちは実際にミュージシャンなので、劇中の演奏は、彼ら自身によるものです。もちろん主役のデューイを演じるジャック・ブラックも。彼が歌っているのは初めて観たのですが、その美声に聴き惚れてしまいました。ま。ちょっと悪乗りすぎるのが玉に傷ですが。

そして出演者の中でも筆者の一押しは、カタブツ校長を演じたジョーン・キューザック。グレイやネイビーといったコンサバティブなファッションで身を包み、髪は毎日完璧にセットされ、銀縁眼鏡に一点の曇りもない。化粧は必要最低限。長身をさらにヒールで高くし、子供と話す時でも自然に腕を組んでいる。まさに名門校の鬼校長。

そんな彼女がデューイに影響され、段々と地を出して行くわけですが、それが最高にキュート! ビールを飲んでちょっとハイになり、スティービー・ニックスの『エッジ・オブ・セブンティーン』を、身体を揺すりながら歌い出す。突き出したローズ色の唇に思わずキスしたくなります。

小ネタもお見逃しなく

そうそう。この映画は小ネタもきいていますからお見逃しなく。オープニングシーンでは、ライブハウスの壁を飾るお知らせやライトに紛れて映画のタイトルや出演者の名前が表示されます。

キーボード担当の生徒のブレザーにさりげなく飾られたピンは、竪琴をかたどったもの。校章には楽譜が。他にも筆者が見つけきれなかったネタは沢山あるはずですから、ニヤニヤしながら探してみてください。

それが先生

この映画と似たようなストーリー、と言ったら失礼かもしれませんが同じの流れの作品はあります。

真面目なところをあげれば、ロビン・ウィリアムス扮する破天荒な教師が名門校の生徒達に生きる希望を与える、『いまを生きる』。ウーピー・コールドバーグ演じる場末のショーガールが修道女たちと歌う喜びに目覚めていく『天使にラブソングを』シリーズ。ドラッグ・クィーンがすすけた街を明るくする『3人のエンジェル』もそうですし、『のだめカンタービレ』や『ミセス・ダウト』にもその類型を見る事ができます。

これらの作品に共通するのは、変革を起こす存在は外から来た人間(達)である事。変革を起こす側もまた、助けられる事。そして、どんなに破天荒で、時として「ロクデナシ」に見える人間でも、その情熱は本物である事。

人というのはやっかいな生き物で、ただ生きているだけでは、喜びを感じられない。特に日本やアメリカなどの「先進国」の人間は、そうかもしれません。人々は、認められたいと思っている。手放しの称賛と承認を求めている。デューイによりバンドに引き込まれ、「You, Perfect!」「Very GOOD!」そうやって熱く、思いがけなく褒められた子供たちの輝く顔が、その証拠です。「先生」に先導され、最初はたどたどしく、次第に熱く演奏しはじめる子供たち。映画の中でもとりわけ好きなシーンです。ラストとクレジットシーンの次に。

しかもデューイはバンドのメンバー以外にも役割、居場所を与え、ちゃんと一人一人を褒めています。それこそが先生、教え導く人がすべき事ではないでしょうか?

つまりこの映画は、はちゃめちゃに楽しいコメディ映画ではありますが、同時に大切な何かを教えてくれ、ちょいとほろりとさせてくれる映画でもあります。皆様ぜひ何度でもお楽しみください。

作品情報

原題:『School of Rock』
出演者:
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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