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ウェスタンへ、あふれんばかりの愛をこめて『スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ』

ウェスタンへ、あふれんばかりの愛をこめて『スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ』

これは邦画です。

『スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ』。題名だけ見れば、どこの国の映画か解らないこの映画は、邦画です。日本人の三池崇史が監督をつとめ、伊藤英明や伊勢谷友介といった日本人役者が出演した日本映画。ただし、一部を除いて出演者は全員、英語で会話をしています。

あらすじを簡単にご紹介すると、源氏と平家が雌雄を決した「壇ノ浦の戦い」から数百年後の日本のある街が舞台。両家の末裔はすっかり落ちぶれていますが、それでも相変わらず敵味方に分かれて争っています。そんな彼らの街にある日、流れ者のガンマンがやってきます。両家とも、相手より優位に立とうとそのガンマンを自軍に引き入れようとし、その小競り合いがやがて保安官や街全体を巻き込んだ争いに発展して―――。

ウェスタンへ愛をこめて

ここまで読んで、「ん?」と首を傾げた方、いらっしゃいますよね。「日本が舞台のはずなのにガンマンに保安官?」と。

そうなのです。この作品は、日本が舞台の邦画ではあるもの、そのスタイルは西部劇(ウェスタン)。タイトルにある「ジャンゴ」とは賞金稼ぎのことで、かつて西部劇全盛時代には、「~のジャンゴ」というタイトルの映画が量産されました。最近でも『ジャンゴ 繋がれざる者』というタイトルの映画がありましたね。

そして邦画にもかかわらず出演者が英語で会話するのも、イタリア製西部劇「マカロニ・ウェスタン」が日本公開時には、イタリア語から英語に吹き替えられていたことへのオマージュです。

さらに言えば、北島三郎さんが歌う『ジャンゴさすらい』が劇中流れますが、あれは『続・荒野の用心棒』のテーマ曲。このテーマ曲は『ジャンゴ 繋がれざる者』でも使われており、西部劇ファンにはお馴染みの曲です。つまりこの作品は、三池崇史監督率いる製作者の、あふれんばかりのウェスタン愛が込められた映画なのです。

豪華キャストでお送りします

この映画のみどころは、全編にちりばめられたウェスタンへのオマージュだけではありません。豪華絢爛たる出演者にもご注目。流れ者のガンマンには、。平家の総帥・清盛を演じるのは、。源軍のリーダー・義経を演じているのは、。日和見主義の保安官には、。そして酒場の女主人・ルリ子は桃井かおりが、源氏側の娼婦・静を木村佳乃が演じています。どうです? 日本映画を支える面々が集まっていますよね。

他にもカメオ出演のごとく香取慎吾と西田敏行が出ていますから、どこに紛れ込んでいるか探してみてください。

評価は分かれるけれど

筆者はこの作品は好きで何度も観ているのですが、好まない方も一定数はいます。邦画なのに、しかも日本を舞台としているのに日本語ではなく英語が使われている事に拒否反応をしめす方もいるでしょうし、三池監督の持ち味であるバイオレンス描写が嫌いな方もいるでしょう。ネタバレぎりぎりでも言ってしまえば、「ハッピー」エンドとは言い難い終わり方なので、そこも評価の分かれるところだと思います。

言ってみればこの作品は、クエンティン・タランティーノ監督の映画に近いモノがあります。彼の作品にも、彼が偏愛する日本のサブカルチャーへのオマージュがくどいくらいにちりばめられ、「普通」の映画とはストーリー展開や表現の仕方が違うものが多い。そしてほぼ例外なく、グロいバイオレンスシーンがあります。だからですかね。数コマだけですけれど、タランティーノが出演しているのは。

という訳で、タランティーノの『キル・ビル』や『レザボア・ドッグス』が好きな方ならば、間違いなく楽しめる作品です。日本語字幕も表示されますから、安心してご覧ください。

作品情報

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ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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