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浜の真砂は尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪アメリカ編≫

浜の真砂は尽きるとも、世に映画賞の種は尽きまじ≪アメリカ編≫

浜の真砂は尽きるとも……

日本でよく知られている「映画賞」と言えば、衛星放送で華やかな授賞式の様子を観ることのできる「アカデミー賞」や「ゴールデングローブ賞」、北野武監督や河瀬直美監督が受賞して以来注目されるようになったカンヌ映画祭、それにドイツのベルリン映画祭あたりでしょうか。

これらの有名どころは、受賞すればそれだけで「名作」と見なされますし、受賞に至らなくともノミネートされただけで箔をつけられ、劇場公開中の看板やDVD発売後のレーベルなどに、「○○賞ノミネート作品」なんて感じで大きく誇らしげに表示されています。

さて実は、世に映画賞と名のつくものは数え切れないほどあり、日々増減を繰り返しています。とは言え、上記のような世界中が受賞の行方を追う映画賞もあれば、村おこし的に企画され、主宰する地域の人間も聞いたことのない様な映画賞があるのも事実。そして賞の名前は知っているものの、その賞の特徴や何が凄いのか知っている方は少ないのではないでしょうか?

という訳で今回は、日本でもおなじみのアメリカで開催される各賞の違いと特徴をご紹介しようと思います。

一番「ありがたい」賞は?

まず、各賞の違いからご説明しましょう。

アカデミー賞とゴールデングローブ賞では、選ぶ人間が違います。アカデミー賞は主に映画産業に関わる「アメリカ科学芸術アカデミー」の会員が対象作品を選び、その会員のほとんどはアメリカ人です。それに対してゴールデングローブ賞は、「ハリウッド外国人記者協会」に所属する外国人記者が選ぶものです。そしてアカデミー賞は映画のみが対象ですが、ゴールデングローブ賞はテレビドラマも対象としています。

映画雑誌等ではよくゴールデングローブ賞はアカデミー賞の前哨戦のように扱われ、確かにここ数年ゴールデングローブ賞を受賞した作品や俳優、監督がアカデミー賞で受賞するケースがありました。とは言え、アメリカ人が好む映画が選ばれることの多いアカデミーと、外国人記者、別の言い方をすればひと癖ある玄人が称賛する作品が選ばれるゴールデングローブですから、単純には比較できません。

次に、ゴールデングローブ賞と比較される賞としては、「エミー賞」というものがあります。このエミー賞は、別名「テレビドラマのアカデミー賞」とも呼ばれ、テレビ業界ではとても権威のある賞です。エミー賞を主催するのは、「米国テレビ芸術科学アカデミー」。

そしてゴールデングローブ賞がどちらかと言えば芸術性を重視するのに対し、エミー賞はエンターティメント性を重視しています。どちらも同じくらいに権威を持っていますが、メディアの注目度から考えると、ゴールデングローブ賞に軍配が上がるでしょう。

そしてこれら三つの賞のうち、どの賞が一番「ありがたい」のかあえて言うならば、伝統と格式のあるアカデミー賞だと言えると思います。

華麗なる授賞式

さて。ショービジネスの発達したアメリカですから、ご紹介した賞の授賞式ともなれば、もう一大エンターティメントのお祭り騒ぎです。

毎年司会を有名なコメディアンや俳優が務め、きわどいジョークと話芸で会場を盛り上げます。

会場入り口前には長々とレッドカーペットが敷かれ、そこを歩く女優の美しく時に奇抜なドレスは授賞式の見どころのひとつであり、映画やファッション誌では毎年特集を組まれます。もちろん、誰と誰が連れだって来たか、どんな様子だったかなんて言うゴシップも飛び交います。最近ではツイッターやインスタグラムで俳優自身が舞台裏をレポートすることもありますね。

アカデミー賞ならば対象は映画だけですが、それでも外国映画やドキュメンタリー、長編・短編アニメ部門などがあり、そこに監督賞や主演女優男優、助演女優男優賞などが付随しますから、大変です。

更にゴールデングローブ賞やエミー賞ならばドラマ部門にミュージカル部門、コメディ部門などと細分化されるわけで、これはもう、参加するだけで大変そう。

司会者なんて、ノミネートされた作品を数え上げるだけでも大変ですよね。実際、2017年第89回のアカデミー賞では、作品賞を間違えるハプニングがありました。

そんな部外者から見れば大変そうな授賞式ですが、放送を見る限り、皆様楽しそうに参加しておられます。つまりはそこに参加できるということ自体が、一種のステイタスなのでしょう。第75回の長編アニメ賞を受賞した宮崎駿監督は、「賞をあげるから来なさいと言われたので仕方がなく」なんてコメントしていましたが。

ちなみに授賞式で女優のドレスより注目されるのが、受賞者のスピーチです。例えばゴールデングローブ賞ではメリル・ストリープが現職大統領を堂々と批判し、喝采を浴びていました。また、「白人ばかりが賞を取る」と揶揄されることの多いアカデミー賞でのハル・ベリーやデンゼル・ワシントンのスピーチも有名です。

謙譲を美徳とする日本人にしてみれば、授賞式では製作スタッフやファンへの感謝を謙虚にのべるものと思うかもしれませんが、「自由の国」アメリカでは、俳優だろうと監督だろうと自分のポリシーや政治信条を堂々と述べる人の方が多いのです。それもまた、アメリカの授賞式の特徴と言えるでしょう。

他にもオモシロ賞、あります。

以上のようなメジャーな賞のほかにも、アメリカでは色んなオモシロ賞が開催されています。

「野次を受けるほど最低」の映画や俳優に贈られる賞、「ラジー賞(ゴールデンラズベリー賞)」については、別の稿ですでにご紹介しましたね。また、インディペンデント映画の登竜門と言われる「サンダンス映画祭」や「全米映画批評家協会賞」も通には知られています。

そしてもうひとつご紹介したいのが、「MTVムービー・アワード」。音楽クリップで知られるMTV主催の映画賞で、「最優秀悪役賞」や「最優秀キスシーン賞」などのユニークな賞に毎年注目が集まっています。

この賞はアカデミー賞やゴールデングローブ賞ほど日本では知られていませんが、歴代受賞者の例をあげればジョニー・デップにブラッド・ピットなど、お馴染みの顔触ればかり。

また主宰するMTVの視聴者は若者が多いので、授賞式は「おごそか」「華やか」というよりも、パーティのノリ。超セレブが司会者にスライムまみれにされたり、その時の話題作のパロディが上映されたり大盛り上がりです。

『ロード・オブ・ザ・リング』の『スペシャル・エクステンデッド・エディション』バージョンのDVDには授賞式で上映されたパロディがすべて収録されているのですが、何度見てもその無駄に高いクオリティと無礼講ギャグに笑いが止まりません。さすがエンターティメント王国アメリカ。YouTubeなどで観られますから、皆さんもどうぞお楽しみください。

映画を選ぶのは、あなた

以上、非常にざっくりとですが、アメリカの映画賞についてご紹介しました。すでにご存じのものもあれば、良く知らないものもあったと思います。各賞とも権威があり、選ばれた作品や監督、俳優は確かにすばらしいものばかり。

とは言え、ラジー賞の稿でもふれたとおり、それらの受賞作品は「あなた以外の」誰かが選んだものです。更に言えば、授賞式がエンターティメントショウと化し、その賞に権威が付与されればされるほど、色んな思惑が渦巻き、ただ純粋に「面白い」作品、「素晴らしい」作品が選ばれるわけではないと言う事です。

白人ばかりがノミネートされたと批判された翌年に、今度は目立って黒人ノミネートの比率が上がったのが、その悪い例といえます。

映画を選ぶのは、あくまであなたです。アカデミー賞を総なめにした作品であっても面白くないと感じることはあるでしょうし、ラジー賞総なめでも号泣する感動作もあります。映画とは、己の好みや気分で気軽に楽しむもの。各映画賞はあくまで参考するにとどめ、どうぞ気ままに好きなように作品を選んでください。

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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