むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

常識破りのヒロイン達の雄姿をみとどけろ!『のだめカンタービレ 最終楽章』前編 / 後編

常識破りのヒロイン達の雄姿をみとどけろ!『のだめカンタービレ 最終楽章』前編 / 後編

少女マンガの「常識」は翻された

「ふぎゃっ」、「はぎゃ?」、「ぎゃぼ~!」。そんな奇声を発する少女マンガの主人公が、それまでいたでしょうか? しかも絵の良しあしはともかく、ヒーローはイケメン。ただし俺様で相手が誰であろうと鉄拳制裁を繰り出す暴君。

おまけに舞台は音大ですが、煌びやかでも天才たちがしのぎを削る場でもなく、阪○タイガースの応援歌をどら声で歌う声楽家男子や、「クラッシックやめてロックする!」なんて叫ぶ金髪男など、ぽんこつどもの巣窟。主人公も一度聴けばどんな難曲でも弾けるようになるピアノの天才ですが、楽譜を読むのが苦手で将来の夢は保育園の先生という……。

この映画の原作『のだめカンタービレ』は、それまでの少女マンガの「常識」を翻す作品でした。けれどキャラの立った登場人物たちと、温いながらも時折熱い彼らの成長物語は、少女漫画を読まない層にまでファンを獲得。漫画は売れに売れ、ドラマ化、アニメ化も実現し、さらには前後編の映画化まで実現して時ならぬクラシックブームまで起こしてしまったのです。

奇跡のようなキャスティング

原作が素晴らしければ素晴らしいほど、実写化は難しいものです。特にこの作品の場合、各登場人物が過ぎるくらいに個性的であり、かつ楽器を弾かねばならないという条件もあります。もちろん舞台ではないのですから、演奏部分は吹き替えに出来るにしても、「様に」なっていなければなりません。しかしこの映画およびドラマでは、そんな奇跡のようなキャスティングが実現しています。

まず、主人公の「のだめ」には、。『スウィングガールズ』では華麗なサックスを聞かせてくれましたが、この作品ではピアノに挑戦です。なにより奇声を発しひょっとこ顔をする「のだめ」なんて、彼女にしかできない!

「俺様何様千秋様」に玉木宏というのもハマっていました。彼はピアノやヴァイオリンもプロ並みに弾けるのに指揮者を目指す、屈折した天才を見事に演じてくれました。いや~イケメンという言葉は彼の為に存在すると言いたくなるような、ノーブルな顔。すらりとした長身。劇中たっぷり見せてくれた燕尾服姿は眼福モノです。オーケストラを前にあれだけ様になる日本人若手俳優は、彼くらいでしょう。ピアノで指揮振りする姿も素敵だった~。

彼らの師匠である世界的指揮者「シュトレーゼマン」を演じるのは、なんと日本人の竹中直人さん。つけ鼻、クリームがかった長い白髪の鬘に濃いドーラン姿で怪しげな日本語を繰り出すその姿に最初は引くかもしれませんが、観ているうちに原作のキャラすら彼に置き換わってしまう強烈な魔力を放っています。

他にも「三木清良」役の水川あさみさんや、「峰龍太郎」役の瑛太、その父親役の伊武雅刀さんと、よくぞこれだけ揃えたものだと、キャスティングの妙にただただ拍手を送りたくなります。

きっとまた、聴きたくなる

のだめの演奏のほとんどはピアニストのラン・ランが演奏した音をふき替えていますが、劇中の演奏シーンは本物のプロのようです。聴いたところによると、実際に弾けるように相当練習したとか。

また前編の、指揮者コンクールで千秋が振る「展覧会の絵」や「ピアノ協奏曲」、後編で彼が常任指揮者になる「ルー・マルレ・オケ」のコンサートで演奏される「序曲1812年」などの名曲は身体に沁みわたるようで、映画であることも忘れて目を閉じ、聴き惚れてしまいます。

だからきっとあなたもこの映画を観た後は、あの何百年も受け継がれてきた音楽達をもっと聴きたくなるはず。それもまた、この映画の魅力ではないでしょうか。

作品情報

出演者:
監督:(前編)/(後編)
原作:『のだめカンタービレ』二ノ宮知子著

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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