むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

豚でもやっぱり、「カッコイイとはこういう事さ」『紅の豚』

豚でもやっぱり、「カッコイイとはこういう事さ」『紅の豚』

宮崎駿の好きなもの

赤瓦の屋根、陽気で元気で強い女達、腕っ節と意気地はあるけれど馬鹿な男達、ぬけるような蒼い空、陽光輝く青い海……。日本が誇る映画監督の一人、宮崎駿監督の作品には、それらのいくつかが必ず描かれています。

そしてこの『紅の豚』には、これらがすべてある、いえ、日本人を含めた異国人が「いそう」「ありそう」「あるに違いない」と思う場所、南イタリア。それもアドリア海側の小都市が舞台。宮崎監督の好きなもの全てと、「空賊」や「賞金稼ぎ」などという心くすぐる要素が、これでもかとばかりに突っ込まれている作品なのです。

いつでも、何度でも観たくなる作品

この映画の主人公は、『紅の豚』というタイトルそのままを名前にしたポルコ・ロッソ。豚なのに粋にダブルのスーツを着こなし、女たちにモテモテの飛行艇乗り。

ですが、彼のライバルとなるカーチス、彼の飛行艇を設計するフィオ、そして彼がまだ人間だった頃からの友人であるジーナも彼と同じくらい丹念に、愛情いっぱいに描かれています。あぁもちろん、「マンマユート団」などの空賊達と、フィオの祖父にしてポルコとは古馴染みのピッコロ社の社長もいい味出しています。

筆者は宮崎駿が監督したスタジオ・ジブリの作品は大好きでほぼすべて、しかも何度も観ています。その中であえて順位をつけるならば、迷いはするもののやはり燦然と輝く1位にあげるのは、この『紅の豚』です。

それはおそらく、ムッソリーニが台頭してくる第2次大戦前と、決して明るい時代ではないイタリアを舞台にしているにもかかわらず、アドリア海の陽光に照らされた海の青がそうさせるのか、陽気で軽快な雰囲気の作品だから。それと、前述した登場人物たちのおかげでしょう。

その世界に入り込みたい

素晴らしい物語(映画)という物は、できればその世界に入りこんで戻ってきたくなるものですが、この『紅の豚』もそんな作品の一つです。そして、その魅力を語るにはあらすじを紹介するのではなく、実際に見てもらうしかありません。

そして一度見てしまえば、あなたもきっと、筆者と同じ願望を抱く事でしょう。つまり、あぁ、わたしもフィオのようにポルコの飛行艇に乗せてもらいたい。ダメならカーチスのでもいい。ピッコロ社の女たちと一緒にスパゲティを食べて、マダム・ジーナの秘密の庭園で、お茶を飲みたい……。フィクションだと分かっているにもかかわらず、見返すたびにそんな夢想をしてしまうのです。

そうさせるのはジブリの色彩豊かな画のおかげだけではなく、宮崎作品と言えばお馴染みの久石譲氏の音楽や、ポルコの声を担当した森山周一郎さんを筆頭とした声優さん達のおかげでしょう。

『紅の豚』のDVDには英語や仏語の吹き替えがあり、興味本位で聴いてみましたが……魅力が半減しました。やはりポルコはあの錆びた声でなければダメで、ジーナは加藤登紀子さんでなければいけないのです。

これからも素晴らしい作品が…?

そんなすばらしい作品を生み出した宮崎駿監督は、最近引退宣言を撤回しました。「地球を何周もするほどの線を描いてきて、体はボロボロです」と言っていた監督ですから、無理はしないで欲しい。でも復帰したということは、また素晴らしい作品を生み出してくれるのかもしれない。そう、この『紅の豚』のような、愛すべき馬鹿野郎どもを描いた作品を。

そんな期待を寄せてしまうのは、筆者だけではないと思いますが、あなたもそうですか?

作品情報

出演者(声): (ポルコ)、(ジーナ)、(フィオ)、(カーチス)
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
Return Top