むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

青春はイタくて格好悪いけど、楽しい。『スウィングガールズ』

青春はイタくて格好悪いけど、楽しい。『スウィングガールズ』

青春って、イタイ。

青春って、イタイ。「頑張る」ことがなんだか恥ずかしくって、馬鹿馬鹿しくって。「こんなことやって何になるのさ」なんて憎まれ口は、上手くいかない事への不満と不安の裏返しで。

成り行きで吹奏楽部の代わりをつとめることになったもの、不満たらたらまったくやる気もなかった女子高生たち。吹奏楽には人数が足りず、これまた成り行きでビックバンドを始めたものの、今度は楽しくなってきたところでお役御免に。今更やりたいなんて言い出せず、「あぁせいせいした」なんて大見え切って、見えないところで大号泣。

あぁもう彼女達の行動が、いちいち見おぼえがあって、痛すぎる。この映画の前半を見ているうちに自分の高校生時代を思い出してしまい、何度も顔を覆って呻いてしまいました。

そしてイタイのは彼女達だけでなく、高校最後の試合で三振に倒れた途端、遊びにはしる野球部員たちであるとか。別れた彼女を想い、歌まで作っちゃう田舎ヤンキー風バンドマンのお兄ちゃん達とか。あぁもう、面映ゆさで叫び出したくなる。さすがは『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督です。

バンドあるある。

じつは筆者も高校時代、吹奏楽部でトロンボーンを吹いていました。しかも入部する気はまるでなく、中学からやっていた友人の付き添いで行って、誘われたので入部。誘ってくれた先輩がトロンボーン奏者だったので、トロンボーンを選んだ。それだけ。主人公たちと違い、最初からマウスピースで音は出せましたが、基礎もなければ、やる気もそんなにありませんでした。

でもねぇ。それが音楽の魔力ってやつなのでしょうか。演奏しだすとはまっちゃうものなのですよ。特にこの作品の場合はジャズですから。気がつくと身体が勝手にスウィングしだします。

劇中、主人公はパソコンとプレステを質入れしてまで楽器を手に入れていましたが、その気持ちもよくわかります。だって、カッコよく吹きたければ、練習するしかないですから。そして練習しようと思えば、自分だけの楽器を手に入れるしかないですから。

著者と同じく高校から吹奏楽を始めた友人の中にもいましたよ、バイトと貯金をはたいて楽器を買った子が。彼女はオーボエ奏者だったのですが、リードを実に楽しそうに自作していましたねぇ。

信号の「麦畑」のメロディや卓球の音、バスガイドさんのホイッスルに団地の布団叩きの音まで。身の回りのあらゆる音を拾いあげ、ハミングしたり手拍子したりするのも「バンドあるある」です。しかもあれね、同じ楽団の仲間が一緒だと、楽しさが加速するんですよ。パート分けたり、「裏打ち」まで始めたり。楽しかったな~。

演奏は俳優自身が

映画では「Take the A train」や「SING SING SING」、「L-O-V-E」など、ジャズの名曲が流れます。おそらく曲名は知らなくとも、CMやBGMで聞いたことのあるメロディばかりでしょうが、その使い方ハマりすぎで面白い。猪に追われるシーンでジャズの神様、アームストロングの「What a Wonderful world」が流れたのには、笑いました。

ちなみに演奏シーンは、出演する俳優さん自身が演奏しています。その証拠に、圧巻の東北音楽祭のステージの後、カーテンコールシーンでのみんなの口元をよく見ると、マウスピースの跡が……!

主演の友子を演じた上野樹里さんは、『のだめカンタービレ』でもピアノを自分でほとんど弾いていましたが、今回のテナーサックスもきまっています。

他のメンバー、コギャルスタイルがやたらと似合っている貫地谷しほりさんのトランペットも素晴らしいし、本仮屋ユイカさんのトロンボーンはプロ級でしたねぇ。平岡祐太氏のピアノも見事でしたよ。あぁそう言えば、ジャズ好きの先生役の竹中直人さんも、『のだめ~』では世界的指揮者役を演じていました。もしやこの作品がきっかけでしょうか。

この映画には現在の日本映画を背負う小日向さんや渡辺えり子さん等、そうそうたるメンバーも出演しています。スウィングガールズ達と彼らのあやつる山形弁は見事ですから、そちらもどうぞお聞き逃しなく。

作品情報

原題:『スウィングガールズ』
出演者:
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
Return Top