むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

運命をぶった斬る俺達の旅は終わらない。『どろろ』

運命をぶった斬る俺達の旅は終わらない。『どろろ』

原作を超えた!?

筆者は邦画よりも洋画派なのですが、この映画に関しては、邦画洋画に関係なく自分ランキングのTOP10に入れたくなるほどお気に入りの作品です。

まず何と言っても音楽が素晴らしい。冒頭のこぶしの効いた挿入歌から始まり、戦闘シーンなのに軽快で踊り出したくなるようなBGM。そして哀しいシーンでは、こちらの涙を最後の一滴まで振り絞らせるかのような哀愁に満ちた笛の音と歌声が……。この稿を書くにあたり久々に聞いてみたのですが、原稿そっちのけで聞き入り、嗚咽まで漏らしてしまいました。

俳優陣も豪華の一言です。主役の百鬼丸とどろろには、妻夫木聡と柴咲コウ。百鬼丸の弟・多宝丸役には、。そして百鬼丸の父親にして彼の体を魔物に売り渡した醍醐景光を演じるのは、。どう~です。彼らの出演料だけで、製作費のかなりの部分が吹っ飛びそうでしょう?

ロケ地もまた豪華ですよ~。なにしろ原作の設定が「戦乱の世」ですから、ガードレールや街灯を写りこませるわけにはいきません。遥々と広がる草原や岩山が撮れるニュージーランドで撮影されています。

そしてもうひとつこの映画をお勧めするポイントは、漫画原作の映画ながら、原作を凌駕する様なスケールと面白さを実現させた作品であると言うこと。しかもこの作品の原作者は、あの手塚治虫先生。その壮大な作品世界を壊さず、ある点では越えたと思えるほどの映画なんて、奇跡に近いのではないでしょうか。

心踊る名シーンの数々

アニメにもなりましたし、ゲームまである作品ですから、粗筋は説明しません。特にお勧めするシーン、というよりも筆者が好きなシーンのみ、ネタバレはまったく気にせずご紹介しようと思います。

まずは百鬼丸とどろろが初めて遭遇する酒場のシーン。妖艶な踊り子に太鼓と三味線のコラボは必見です。どろろと百鬼丸の絡みはどれも素晴らしく、特に魔物を倒して声を取り戻した百鬼丸がどろろの名を何度も呼ぶシーンと、目を取り戻して彼女を初めて見るシーンは感涙必至。百鬼丸の子供のような笑顔と、不安そうな表情に痺れます。

感涙必至と言えば、最初の妖怪を倒した村を出るシーンもグッとくること間違いなし。腕から剣が生えているは、妖怪を倒したら身体の一部が生えてくるはで、助けたはずの村人たちから化け物扱いをされ石もて追われる百鬼丸。

そんな彼をどろろは一緒に石を受けつつ、「あいつらを見返してやれ」と励まします。あぁもう。この子がいれば、これだけ味方をしてくれる子がいれば、何があっても生きていけるよね! 目頭を熱くしつつもそう思える、名シーンです。

それから父親の醍醐景光との戦いが―――おっと。さすがにネタバレしすぎですね。そこから先は、ご自分でお確かめ下さい。

しかし残念ながら……

「どろろ」のエンディングは続編を予感させる終わり方をしており、実際に撮影当初は3部作の予定だったようです。

しかし、この「どろろ」自体も日本映画にしては破格の製作費、20億円を費やしましたが、続編はそこからさらに3倍になる予想が立てられまして。さすがにそこまでのカネはないと、製作会社に突っぱねられ企画自体がとん挫。大河ドラマに出演中の柴咲コウを筆頭に、当時よりもさらに出演料が跳ね上がり、かつ多忙な俳優陣を揃えねばならない事を考えれば、非常に残念なことに、続編が製作されることはなさそうです。

まぁ原作である手塚治虫版『どろろ』もストーリーとしてみれば未完ですから、これでいいのかもしれません。きっと別の時空のどこかで、百鬼丸とどろろは旅を続けている。そう思うことにして、この奇跡のような作品を何度も観返す事にしましょう。

作品情報

出演者:
監督:
原作:『どろろ』手塚治虫著

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Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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