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それは名誉か不名誉か。「ラジー賞」ってなんだ?

それは名誉か不名誉か。「ラジー賞」ってなんだ?

「ラジー賞」ってなんだ?

映画をあまり見ない人にも知られているアカデミー賞を始めとして、世に映画賞は数ありますが、皆さんは「ラジー賞」をご存知でしょうか。1981年に誕生し、アカデミー賞授賞式の前夜に受賞式があるアメリカの映画賞で、嘲笑や軽蔑をあらわす米語「Razz」から名付けられた「野次を受けるほど最低」の映画や俳優に贈られる賞です。

受賞作品はアカデミー賞と同じく、会員による投票で決まります。とは言っても、映画業界に携わる実績のあるプロが会員のアカデミー賞とは異なり、ラジー賞を選考するのは一般の映画ファン。40ドル程度の会費を払えば、誰でも投票権を手にできます。

ちなみに受賞作品や受賞者にはトロフィーが授与されるのですが、これがまた賞の性質を良く表して、実にチープ。設立者が「ラジー賞」では名前の通りが悪いと思ったのか、それとも洒落を利かせたつもりなのか。Razzのもう一つの意味であるラズベリーの実に見立てたゴルフボールを金色に塗り、8mmフィルム缶に乗せて台所用壁紙を巻いて映画のタイトルを貼り付けただけのもの。

そのデザインからラジー賞は「ゴールデンラズベリー賞」とも呼ばれているわけですが、そのチープなトロフィーも本物はひとつだけ。受賞者にはチープなトロフィーのさらにチープなレプリカが渡されます。

受賞作 と受賞者

では、映画人ならば決してもらいたくないだろうその賞を受賞する作品や俳優とは、どんなもの(人)なのでしょうか?

第37回である今年の「最低作品賞」にノミネートされたのは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や『ダーティ・グランパ』、『キング・オブ・エジプト』に『インデペンデンス・デイ リサージェンス』、『ズーランダー NO.2』、『ヒラリーのアメリカ、民主党の秘密の歴史』です。

ちなみに『ズーランダー~』は監督賞や男優賞など最多の9つの部門でノミネートされていました。そして受賞したのは、ドキュメンタリー映画の『ヒラリーのアメリカ~』。「最低主演男優賞」と「最低主演女優賞」、おまけに「最低映画監督賞」もこの映画から選出されています。

他の部門はどうかというと、「最低リメイク、パクリ、続編映画賞」は『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』。「最低助演男優賞」と「最低脚本賞」、「最低スクリーンコンボ賞」もこの作品からですね。ちなみに「最低助演女優賞」は『ズーランダーNO.2』の女優さんが受賞されています。

今回と過去の受賞状況をみると、作品賞を受賞した作品が他の賞も総なめにする傾向にあるようです。そのあたりもアカデミー賞と似ていますね。

しかし似ているとは言っても、誰もが馳せ参じる感のあるアカデミー賞とは違い、このラジー賞の授賞式に参加する監督や俳優は多くありません。

第16回に『ショーガール』で作品賞・監督賞など7部門を受賞したポール・バーホーベン監督、第22回に5部門で受賞した『フレディのワイセツな関係』の監督・主演のトム・グリーン、第25回に作品賞や監督賞など4部門で受賞した『キャットウーマン』で、主演女優賞を受賞したハル・ベリーが出席したくらい。やはり皆さん、映画人としてこの賞を受賞するのは複雑なのでしょう。

ラジー賞受賞作≠面白くない映画

では、ラジー賞受賞作は本当に「最低」な映画ばかりなのでしょうか?

確かに設立当初は、興行成績も評価も芳しくない『ミュージック・ミュージック(原題はCan’t Stop the Music)』といった作品が受賞しています。けれど最近はアカデミー賞を受賞したエディ・レッドメインなど、演技力も実績もあるのに「ちょっとあれな」役柄を演じてしまった俳優や、『トランスフォーマー: リベンジ』のように前評判が高すぎて(もしくは煽り過ぎて)実際の出来がいま一の「超大作」などが、受賞する傾向にあるようです。

元々ラジー賞は、おふざけと映画への愛で設立された賞。ですから玄人受けはともかく、観客から観れば面白くない作品を選ぶ場合もあります。けれど、良くできているのに編集や何かが惜しい作品、題材や描き方が特殊すぎて一般受けしない作品が選ばれることもあり、第37回に『ヒラリーのアメリカ~』が選ばれたのは、それが理由ではないでしょうか。

また、主演や助演賞に関しても、酷い演技をした俳優が受賞するばかりではありません。事実、サンドラ・ブロックのようにラジー賞とアカデミー賞を同時受賞している俳優さんもいますし、『華氏911』のように題材にされたブッシュ大統領が最低主演男優賞を獲得したケースもあります。

決めるのはあなた

現代の便利すぎる世の中では、映画を観に行く前に、前評判を含めた情報を検索するのが当たり前になっていますよね。でも。こうして映画のコラムを書いている著者が言うのもおかしいかもしれませんが、結局のところアカデミー賞だろうとラジー賞であろうと、評価しているのはあなた以外の誰かでしかありません。そして他の誰がどんな評価を下していようと、その作品を面白いと思うか、そうでないと思うかを決めるのは、あなたです。

ですから。誰かの評価で観る映画を決めるのではなく、たまには冒険してはいかがでしょうか? そう例えば、ラジー賞受賞作品をあえて狙って観るとか。きっと、面白い出会いがあなたを待っていますよ。

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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