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フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

風呂がつないだ古代ローマと現代日本。『テルマエ・ロマエ』

風呂がつないだ古代ローマと現代日本。『テルマエ・ロマエ』

濃い顔俳優揃い踏み

『のだめカンタービレ』などのように、外国人の役を日本人が演じたドラマや映画はいままでいくつかありましたが、主要人物のほぼすべてを日本人が演じた作品はなかったのではないでしょうか?

『テルマエ・ロマエ』。ヤマザキマリ原作のこのコメディ映画は、主役のルシウスを演じた阿部寛さんを筆頭に、日本人俳優の中でも特に顔の濃い俳優さんを選りすぐって古代ローマ人に仕立て上げ、しかも成功させたという稀有な作品です。

筆者は元々、塩野七生さんが書きあげた全15巻の『ローマ人の物語』を愛読しているので、この映画の主要人物であるハドリアヌス帝やその後継者候補のケイオニウス等についてよく知っています。しかし、最近ではユリウス・カエサルと呼ばれることの多いジュリアス・シーザーはともかくハドリアヌスについては、この映画を観てはじめて知った方は多いのではないでしょうか?

更に言えば、今日のヨーロッパの基礎にして一千年の長きにわたり反映したかの大帝国の民と極東の国である日本人との共通点を知って、意外に思った方も。

Youはなにしに日本へ?

映画だけではなく、同名の原作漫画も大ヒットしましたので、あらすじに関しては割愛しましょう。というよりも、この作品の面白さは物語の筋ではありません。古代ローマの浴場技師であるルシウスが二千年の時を超えて現代日本にタイムスリップし、温泉卵やフルーツ牛乳にシャンプーハットなど、我が国の誇る風呂文化にカルチャーショックを受ける、そのリアクションにこそあります。

言ってみればこの物語は、最近さかんに作られている『Youは何しに日本へ?』のような外国人の目から見た日本の文化・技術の素晴らしさを再発見する番組と似ています。

しかも風呂文化限定だから、自国礼賛になり過ぎない。そして彼我の間には二千年の時と洋の東西の端という距離までありますから、そのギャップはさらに大きくなり、そこに笑いが生まれるわけです。それをまた、黙っていればいかつい顔の阿部寛さんが大真面目に演じるものですから……感心しつつも爆笑するしかありません。

実はロケ地が凄いんです

以上のように『テルマエ・ロマエ』は笑い必至のコメディ映画ですが、実は時代考証もしっかりしており、なによりロケ地がすごいのです。なんと、イタリアの映画の都チネチタで撮影。セットは、総制作費200億円以上をかけたHBOとBBC合作の海外ドラマ『ROME』と同じものを使っています。

お陰で濃い顔とは言え日本人が演じるローマ皇帝や技師でも違和感もチープさもなく、質実剛健にして絢爛豪華な古代ローマの世界に入り込むことができます。

さらにルシウスが体験する日本の温泉地も、草津温泉や群馬県の伊香保温泉、栃木県の北温泉など日本の名湯で撮影されていますから、臨場感抜群。きっとこの映画を観終わった後は、映画のキャッチにあるようにひと風呂浴びたくなることでしょう。

という訳で。ユダヤ戦役など、劇中では歴史嫌いの方ならアレルギー反応が出そうな歴史史実も扱っていますが、どうぞゆったりと温泉につかる様な気分で、映画をお楽しみください。

作品情報

出演者:
監督:
原作:『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ著
シリーズ作:『

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Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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