むびれぽ

フィルムを喰らう!~感情中毒の巣窟~

青空を見上げた後のような爽やかさ漂う『フィールド・オブ・ドリームス』

青空を見上げた後のような爽やかさ漂う『フィールド・オブ・ドリームス』

「シューレス」ジョー

著者は熱心な野球ファンでも大リーグオタクでもありませんが、それでもこの映画の題材となった事件は知っています。ブラックソックス事件。「シューレス」ジョーの名で親しまれた、野球界のヒーロー、ジョー・ジャクソンを球界永久追放にした八百長事件。

記者会見の場から背を丸めて去ろうとする彼に、「嘘だと言ってよジョー!」と泣きながら呼びかけたかつての男の子は、この映画を観たのでしょうか。

最もアメリカらしい映画

『フィールド・オブ・ドリームス』は、最もアメリカらしい映画のひとつといえます。まず主人公が、アイオワのどこにでもいそうな、トウモロコシ農家。演じるのはイケメン俳優のケヴィン・コスナーですが、彼もやっぱりアメリカ人。トラクターを運転する姿が実にさまになっています。

そんな彼がトウモロコシ畑を切り開いてつくったのが、野球場。最近はサッカーもそれなりに人気のようですが、やはりアメリカを代表するスポーツと言えば、野球ですよね。

謎の声が聴こえたからと作っちゃう主人公のレイ・キンセラは普通に考えれば狂人ですが、アメリカならばそれもありかなぁとも思えます。これがビリヤード場やボーリング場なら、家族の支持は得られなかったでしょう。

レイの(他人から見れば)奇行はそれだけではとどまらず、声の導くままにその野球場に隠遁生活を送っていた作家を連れてきますが、「声」はそんな彼に応えるかのように、小さな野球場に「シューレス」ジョーのほか、球界を永久追放された選手達の幽霊(幻)を出現させて―――。

爽やかな心地よさを感じさせる作品

この作品は青春映画、感動作品として紹介されることが多いですが、観ている間中ハンカチが手放せないと言う作品ではありません。観終わった後、気がついたら微笑んでいるような、青空を、レイが作った野球場の上にひろがっていた、突き抜けるような大きな空をふと見上げた後の様な、爽やかな心地よさを感じさせる作品です。

とくにそれを感じさせるシーンを、ネタバレになってしまいますが、ご紹介しましょう。

ひとつ目は、幻たちの試合をレイたちが時折野次を飛ばしながら観戦するシーン。途中で彼の娘がスタンドから落ちて、呼吸停止してしまいます。それを助けてくれたのが、幽霊に交じって試合をしていたお医者さんでした。

彼は昔の夢が実現した試合を、しかもあのジョー達との試合を本当に楽しんでおり、一度球場を出れば二度と戻れないと分かっていても、助けてくれたのです。その時彼が浮かべた笑顔は、何ともいえないもので。この映画の名シーンの一つです。

もう一つは、主人公がけんか別れしたままの父親と、キャッチボールをするシーン。ケヴィン・コスナーの浮かべる笑顔が、もう……最高です! 涙ながらに謝罪し合う訳でも、熱烈にハグし合う訳でもなく。ちらりと目を見かわして、おもむろにキャッチボールを始める。あぁこれもまた、アメリカの理想の家族の姿、父親と息子の光景なのだなぁと観るたびに思います。

そんなアメリカの夢を詰め込んだこの作品、どうぞご家族でお楽しみください。

作品情報

原題:『Field of Dreams』
出演者:
監督:
原作:『シューレス・ジョー』ウイリアム・パトリック・キンセラ著

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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