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アジアの喜劇王チャウ・シンチーの、「ありえねー!」カンフー映画『カンフーハッスル』

アジアの喜劇王チャウ・シンチーの、「ありえねー!」カンフー映画『カンフーハッスル』

好きなものすべてを突っ込んだ映画

『小林サッカー』や『喜劇王』のヒットで日本でも知られるようになった、(周星馳)。『カンフーハッスル』はその彼が、自分の好きなもの全てを突っ込んで創り上げたアクション映画です。ちなみに台湾映画ではなく、香港映画です。

盛りだくさんな見どころは後でご紹介するとして、まずはあらすじを簡単にご紹介しましょう。作品の舞台は中国の上海。1930年代の、煌びやかな旧居留地と怪しげな裏路地が隣り合わせになっているその魔都は、「斧頭会(ふとうかい)」という裏組織が支配していました。

ある日街の貧困地区・豚小屋砦に斧頭会を名乗る2人組の男がのり込んで来たのですが、実はただのチンピラ。いちゃもんをつけて金を巻き上げるつもりが、反対に住人達にボコボコにされます。しかし逃げ帰る途中に彼らが投げた爆竹が、偶然通りかかった斧頭会の幹部に命中。怒った幹部が住人の一人を半殺しにしかけたのですが、今度は彼が吹っ飛ばされます。

なんとこの豚小屋砦には中国武術の達人たちが隠れ住んでおり、幹部を助けようと駆けつけた斧頭会の構成員をつぎつぎと倒して行きます。メンツをつぶされた斧頭会は刺客を送り込みますが、達人達はそれも撃退。業を煮やした斧頭会はついに、最強の殺し屋、「火雲邪神」を牢獄から出してしまい―――。

漫画みたいな超展開とギャグの連続

他の作品と同様にこの映画でも監督・主演をつとめるチャウ・シンチー。彼は日本のアニメファンとして有名で、作品には漫画のような超展開と、大げさなギャグが随所にみられます。

例えば、斧頭会の幹部を吹っ飛ばした達人の「洪家鐵線拳」。この拳法は実際に少林拳にありますが、映画で表現されていたような鉄のリングは使いませんし、その達人がオカマちゃんのような方であることはないでしょう。でもその方が、インパクトがあって面白いですよね?

また豚小屋砦の大家さん夫妻。旦那さんは「太極拳」の達人で、奥さんは「獅咆哮」の使い手。彼らの戦闘シーンもベタで大げさですけれど何度見てもおかしい。相手の攻撃をシルクのパジャマ姿でぬらりぬらりとかわしたり、獅咆哮のアイテムの、お寺にあるような大きさの鐘をどこかから取り出したり。まるで漫画をみているようです。

彼らが斧頭会の組長と相談役の車に乗り込み脅すシーンは必見。そしてラスボスの必殺技が、ガマ蛙のような外見になる「崑崙派蛤蟇功」って……!

チャウ・シンチーの映画、もしくは香港映画を観たことのない人でも、少年漫画やダウン・タウン系のお笑いが好きな方であれば、抱腹絶倒間違いなしです。

なぜ「カンフー」?

そうそう。いまご紹介したように、この映画では太極拳や少林拳の有名な門派の達人たちが登場します。にもかかわらず邦題が『カンフーハッスル』で、原題が『功夫(カンフー)』なのは、その方が分かりやすい為でしょう。

中国語での「功夫」は「練習や鍛錬、訓練の蓄積」や、それにかけた「時間や労力」を意味しますが、チャウ・シンチーもファンであるブルース・リーが登場して以来、中国武術全体をさしてカンフーと呼ばれるようになったことから、中国武術の登場する映画の多くに「カンフー」の名がつけられていることも、一因としてあるでしょう。

現場はスタッフまで面白く!

チャウ・シンチーの映画は確かに「ベタな」笑いに満ちていますが、彼はそれを意識的にしています。どうすればより面白くなるか、笑わせることができるか。それをつきつめた彼は毎回「何処から見つけてきた?」と思わず聞きたくなるほど、見た目が面白い役者さん(時にそれがデビュー作)やスタッフを使いますから、そこも見どころの一つです。

そうそう。そうして選ばれた斧頭会の組長役のチャン・クォックワン(陳国坤)と、相談役のティン・カイマン(田啓文)は『小林サッカー』にも出ています。元々彼らもスタッフとプロデューサーだったのですが、チャン・クォックワンの方はブルース・リーに似ているという理由で、ティン・カイマンは……彼のいっちゃった演技が面白いから? チャウ・シンチーの映画の俳優として活躍しています。

『小林サッカー』ではそれぞれ「魔の手」の使い手と「鉄の肌」の使い手に扮していますから、その変わりっぷりもぜひ見比べてみてください。

作品情報

原題:『功夫』
出演者:
監督:

ABOUT THE AUTHOR

Hiro Miyama
はじめまして。作家兼ライターの海山ヒロ(みやまひろ)と申します。

物心つく前から映画好きの両親に連れられ、映画館へ。そして家族のだんらん時に見ていたのは、各放送局の洋画劇場でした。おかげでしっかり映画好きに育ったわたしは、今日もまた、世界の片隅で映画への愛をこうしてつづっています。

ついつい口ずさみたくなる様な音楽に、悲喜こもごもの物語。そして素晴らしい衣装や舞台装置に夢のような風景が詰まった映画は、総合芸術です。
そんな数々の名画達に出会うお手伝いを、すこしでも出来れば嬉しいです。
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